中国伝統医学(中医学)とは、哲学思想や周辺化学など四千年培われて形成された医療体系です。⼈間界と⾃然界との関係【全体観】を重要視しており「⾃然界も⼈間の⾝体も同じ法則で活動している」と考えられております。その中でも基本的な陰陽学説・五⾏学説精・気⾎津液・臓象学説・経絡学説が中医学の中で最も基本的な体質や状態、あるいは養⽣の考え⽅の基盤となっております。
03:精・気血津液
(2) 気の働き
①推動作⽤《ものを動かす》
1) ⾝体の成⻑、発育を促進する。
2) 歩く、話す、⾒る、書くなどの動作を⾏なう。
3) ⾎、津液など体内のすべての物質を全⾝に推しめぐらせる。
4) 五臓六腑、経絡の⽣理機能を維持する。
②温煦作⽤《⾝体を温める》
1) ⾝体(⼿⾜)を温める。
2) ⾎や津液を温煦して全⾝にめぐらせる。
3) 臓腑や⽪膚、筋⾻などを温める。
③防御作⽤《外邪の侵⼊を防ぐ》邪気の侵⼊を防ぐ。
④固摂作⽤《流出を防ぐ》
1) 体内の物質が流出するのを防ぐ。
a.⾎が経脈から流出するのを防ぐ。
b.津液、精液、汗、尿などが余分に流出するのを防ぐ。
2) 内臓を⼀定の位置に保つ働きをする。
⑤気化作⽤《ものの形や性質を変える》
1) 気の⽣成:飲⾷物から⽔穀の精微へ、さらに営気、衛気への気化。
2) ⽔殻の精微から精、⾎、津液の⽣成。
3) ⽔液を尿や汗に変化させる。
⑥栄養作⽤《組織を栄養する》
1) 臓腑、経絡、組織、器官を栄養する。
2) ⾎とともに脈中をめぐる。
(3) ⾎の働き
①臓腑、経絡、器官、組織のすべての栄養源
⾎の不⾜により各部に栄養不良の症状が現れる。おもに感覚器と運動器の障害が現れる。指先のしびれ、筋⾁のけいれん、知覚鈍⿇、⽖がもろい、視⼒低下など。
②精神活動の栄養源
精神活動は⼼の中の神の働きだが、充分な⾎の滋養を受けてはじめて精神、情緒が安定する。⾎が不⾜すると神志に異常が現れる。不眠、多夢、不安感、落ち込みやすい、情緒不安定など。
(4) 津液の働き
①臓腑、五官(⽬、⿐、⽿、⾆、⼝)、のど、⽪膚などを潤す津液の不⾜により⽬、 ⿐腔の乾燥、のどや⽪膚の乾燥などの症状が現れる。
②関節や筋⾁などを潤し、動きを円滑にする
津液の不⾜により関節がうまく動かない、動作時に⾳がするなどの症状が現れる。
③津液は営気と合わさり気化して⾎になる
津液の不⾜は⾎の不⾜にもつながる。
気、⾎、津液、精は⼈体において基礎となる物質である。それぞれ異なった役割を担い、互いに密接に関係し合っている。以下にその関係を説明する。
(1) 気と⾎の関係
①気は⾎をめぐらす
⾎が脈のなかを正常に運⾏するためには気の⼒を必要とする。⾎は⾃分の⼒では動けない。
②気は⾎を統べる
⾎が脈の外にあふれ出さないようにする気の働き。
③⾎は気を載せる
気は⾎に付着して脈のなかを運⾏する。⾎が脈内にとどまらずに流れるのは、気が⾎に付着して動かしているためである。
④気は⾎を⽣む
脾胃の気の働きにより、飲⾷物から⽔穀の精微をつくり、さらに⾎をつくる。
(2) 気と津液の関係
気は津液をめぐらす気が⾎に付着して全⾝に運んでいるのと同様に、津液にも付着して全⾝に運んでいる。
(3) ⾎と津液の関係
⾎と津液はともに脾胃が化⽣する⽔穀の精微からつくられるため、「津⾎同源」といわれている。働きも⼈体を栄養し潤す濡養作⽤で⾮常に似ている。⾎は⾎脈のなかだけを流れ、⾎脈のめぐっている場所を濡養している。津液は⾎脈によって濡養されない⾎脈の外を濡養している。臓腑、経絡、器官、組織など⾎脈が流れている場所は⾎が濡養しているが、⽪膚、関節、⽬、⿐、⼝、胃腸のなかなどの⾎脈の外の場所は津液が濡養している。
(4) 精と⾎の関係
精と⾎は「精⾎同源」といわれている。精と⾎は⼀⽅が不⾜すると、その不⾜を補うために精が⾎に、⾎が精に互いに転化することができる。
05:蔵象学説
◆肝の主な⽣理機能
(1) 疏泄をつかさどる
肝は五⾏で「⽊」に属している。その性質は何ものにも邪魔されず、枝葉や根を気ままに伸ばして成⻑する樹⽊にたとえられる。全⾝の気が滞りなく、スムーズに運⾏するようにコントロールするのを肝の疏泄作⽤という。①気がスムーズに流れるようにコントロールする……肝は全⾝の気がスムーズに流れるように、コントロールしている。疏泄の働きが正常ならば気が流れ、⾎・津液もスムーズにめぐることができる。肝の疏泄に異常がおこると気が停滞して、肝・胆の経絡上(少腹部、胸脇部、乳房、⽬、側頭部など)に脹りや痛みが現れる。②⼼をのびやかにさせ、思考⼒や判断⼒を豊かにする……肝の疏泄が正常で気をスムーズにめぐらせていれば、気分もすっきりして気持ちがよい。感情や精神が安定すれば、物ごとを落ち着いて考えることができ、正しい判断が下せる。肝の疏泄が失調すると憂鬱感、イライラ、落ち着きがない、怒りっぽい、よくため息が出るなどの症状が現れる。③脾胃の消化吸収を助ける……飲⾷物の消化吸収と排泄は本来、脾胃の働き(運化作⽤)である。肝は脾胃の働きがきちんと⾏なわれているか常に監視をしながら、脾胃の運化作⽤に関わっている。胆汁の分泌も肝の疏泄作⽤に頼っている。肝の疏泄に異常がおこる と脾胃の働き(運化作⽤)に影響し⾷欲不振、胃のもたれ、移動性の腹痛、便秘、下痢、胆汁の分泌不⾜などの症状が現れる。
(2) ⾎を貯蔵する
肝は栄養物質である⾎を貯え、必要に応じて適切な量の⾎を全⾝に供給している。スポーツをしている時は、⼤量の⾎を筋⾁に供給し、読書の時には、⾎を⽬に供給している。⽇中、活動している時は全⾝をめぐり、夜間は再び肝に戻り、貯えられている。肝に貯えられている⾎が減ると栄養不良、⼿⾜のしびれ、筋⾁のひきつれ、視⼒低下などの症状が現れる。これを肝⾎の不⾜という。
◆胆の主な⽣理機能
(1) 胆汁を貯蔵する
胆は六腑の⼀つで、奇恒の府でもある。両⽅に属し、肝と表裏をなしている。胆に貯蔵されている胆汁は肝の精気からつくられ、分泌は肝の疏泄によって調節されている。胆汁 は苦味があり、⼩腸から分泌され飲⾷物の消化を助ける。肝の働きが乱れると胆汁の分泌に影響が及んで⼝が苦い、胸脇部が脹る、⾷欲不振などの症状が現れる。
(2) 決断をつかさどる
胆は決断⼒、勇気と関係が深い。胆は肝の疏泄に助けられながら、物事を正確に判断した上で決定する能⼒を持つ。胆の働きが衰えると決断⼒が鈍ったり、ビクビクとおびえたり、勇気がなくなる。
※肝・胆が弱った時の症状
⽬の疲れ、筋⾁や⾎管、⽣理のトラブル、停滞感、吐き気、疲れやすい
⾜がつる、突発性の病気、⾃律神経系のトラブル

◆⼼の主な⽣理機能
(1) ⾎脈をつかさどる
⼼は胸中にあり外を膜(⼼包)でおおわれ、五臓六腑のなかで最も重要な臓腑とされている。⼼は⼼気の推動作⽤によって、⾎を全⾝のすみずみまでめぐらせている。これにより全⾝の組織・器官は⾎の滋養が受けられる。⼼の規則正しい拍動は、絶え間ない⼼⾎の供給によって成り⽴っている。⼼気の不⾜や⼼⾎の不⾜によって、⼼を栄養できなくなると⼼の拍動が乱れて⼼悸の症状が現れる。⼼の規則正しいリズムを維持するには、充実した⼼気と豊富な⼼⾎が必要で ある。⼼の病理は⼼の拍動、顔⾊、⾆⾊、脈などに影響する。 ⼼の働きが衰えると⼼悸のほかに息切れ、声が弱々しい、顔⾊が悪い、⾆質淡⽩、脈弱・無⼒などの症状が現れる。悪化すると⾎が滞り、瘀⾎の症状が現れる。胸痛、顔⾊や⾆⾊が⻘紫⾊になったり、脈渋、結代となる。
(2) 神を蔵す(精神活動を統括する)
「神」とは感情、意識、思考などすべての精神活動をさす⾔葉である。⼼は「神を蔵す」とは、感情、意識、思考、睡眠、思維活動など、すべての精神活動が⼼の働きであることを意味している。これらの精神活動は、総論で述べたように五臓がそれぞれ分担して⾏なってい る。肝には「魂」があり理性、判断⼒、脾には「意」があり思考、記憶⼒、注意⼒、肺には「魄」があり視⼒、聴⼒、痛覚、温度覚など先天的な感覚や運動能⼒、腎には「志」があり意志や信念がそれぞれ宿っている。魂、意、魄、志はすべて、⼼が⽀配している神の働きに帰属している。 ⼼神は⼼⾎の栄養を受けて、正常な働きを維持している。⼼⾎が絶えず⼼神を滋養していれば、精神は安定し思考も正常に活動する。⼼神の症状は主に精神活動の異常となって現れる。⼼神が⼼⾎の滋養を受けられないと不安感、不眠、多夢、驚きやすいなどの症状が現れる。⼼神の症状が悪化すると昏睡、意識障害、痴呆、⾔語錯乱などの症状が現れる。
◆⼩腸の主な⽣理機能
(1) 受盛の官、化物をつかさどる
胃で腐熟された飲⾷物は、胃の降濁の働きにより⼩腸に送られる。⼩腸ではさらに時間をかけて消化が⾏なわれ、飲⾷物の中から⽔穀の精微が取り出される。
(2) 清濁を 泌別する
飲⾷物は⼩腸で消化された後、⾝体に必要な⽔穀の精微(清)と不要な⾷物残渣(濁)を分ける。⽔穀の精微は脾の運化により吸収され肺へ送られ、さらに全⾝へと運ばれる。⾷物残渣はさらに⼤腸へと送られる。この⼀連の作業を⼩腸は「化物を主る」「清濁を泌 別する」という。これらの働きが失調すると腹痛、泄瀉、腸鳴などの症状が現れる。
※⼼が弱った時の症状
⾆のトラブル、循環器系のトラブル、過労、冷えのぼせ、⾼⾎圧
⼼筋梗塞、不整脈、⾎液循環の停滞

◆脾の主な⽣理機能
(1) 運化をつかさどる
①⽔穀を運化する(飲⾷物の消化吸収を主る)
「⽔穀を運化する」とは脾が胃、⼩腸、⼤腸を通して飲⾷物を消化し⾝体に必要な物質(⽔穀の精微)をつくりだして吸収する働きをいう。脾の働きが低下すると、栄養物を吸収できず五臓六腑や全⾝に栄養不良の症状が現れる。脾は⽣命活動を維持するために不可⽋な気、⾎、津液をつくり出す働きをしている。脾が「後天の本」といわれる所以である。 ⼝から⼊った飲⾷物は胃で消化されドロドロの状態で⼩腸に送られる。飲⾷物が⼩腸に送られると⽔穀の精微(栄養物質)と糟粕(排泄物)に分けられる。⽔穀の精微は脾の運化により、腸から吸収され肺へ運ばれる。残った糟粕(排泄物)は⼤腸から肛⾨まで運ばれ⼤便として排泄される。脾の運化が失調すると⾷欲不振、⾷べるとすぐおなかが脹る、腹部のもたれ、便が軟らかいなどの症状が現れる。
②津液を運化する(津液の吸収を主る)
⽔穀の精微と⼀緒に吸収された津液は脾の運化により肺へ運ばれ、全⾝に散布される。全⾝をめぐった津液は不要になると肺の働きで汗になり、腎の働きで尿となって⾝体の外 に排泄される。脾の運化に異常が出ると津液代謝が悪くなり、浮腫、痰飲の形成、下半⾝が重だるいなどの症状が現れる。
(2) 昇清をつかさどる
「昇清を主る」とは、脾の運化で吸収された⽔穀の精微や津液などの栄養物質を、肺や⾝体の上部に引き上げる働きである。臓腑や諸器官が、もとの位置から下垂しないようにするのも脾の昇清の働きである。脾の昇清の働きが低下すると、内臓下垂、⼦宮下垂、脱肛、眼瞼下垂、腹部の下墜感、下痢などの症状が現れる。
(3)統⾎をつかさどる
「統⾎を主る」とは、⾎が脈の外に出ないようにする働きである。脾の統⾎の働きが失調すると、⿐⾎、⾎便、⾎尿、崩漏、⽪下出⾎など⾝体の各部に出⾎の症状が現れる。
◆胃の主な⽣理機能
(1) 受納と腐熟をつかさどる
胃は⼝から⼊った飲⾷物を受け⼊れる。これを受納という。胃に⼊れられた飲⾷物は消化されてドロドロのかゆ状の物質に形を変える。これを腐熟という。このようにして消化の第⼀歩が⾏なわれる。
(2) 降をもって和となす
飲⾷物は胃に送られ受納と腐熟を受けた後、胃の降濁の働きによって⼩腸へ運ばれる。飲⾷物は、上に逆流せずに肛⾨まで下へ下へと運ばれる。これを胃は「降をもって和となす」という。胃の飲⾷物を下へ送る働きが失調すると、下降できない飲⾷物が胃のなかで停滞し、上腹部が脹る、悪⼼・嘔吐、⾷欲不振などの症状が現れる。
※脾・胃が弱った時の症状
貧⾎、低⾎圧、糖尿病、⼿⾜の無⼒感、顔や肌が⻩⾊い、全⾝の倦怠感、胃痛、出⾎性の病気、精神不安定など

◆肺の主な⽣理機能
(1) 気・呼吸をつかさどる
肺は清気を吸い込み、体内で不要となった濁気を吐き出す働きがある。いわば体内と外の気を交換する場所である。この働きを肺は「呼吸を司る」という。肺は⼈体に有⽤な気をつくりだす場所である。気は腎中の精気がもとになり栄養物質(⽔穀の精微)と合わさり、肺に⾏き胸中で空気中の清気と結びついてできる。肺でつくられた気は肺を出発点として経絡をめぐり全⾝に送られ、⼈体の⽣命活動を維持する。これを肺は「⼀⾝の気を主る」という。
(2) 宣散と粛降をつかさどる
①宣散の働き(宣散とは⽔穀の精微や津液を外⽅(体表)や上⽅(頭部)に散布する働き。宣散のイメージはシャワーを上に向けて噴射した感じ)
脾の昇清の働きで肺に送られた⽔穀の精微や津液は、肺の宣散の働きで体表や頭部に運ばれる。肺の宣散の働きが乱れると、体表や組織まで栄養物質が届かないため、⽪膚の乾燥や各部の栄養状態が低下するなどの症状が現れる。汗の排泄も肺の宣散作⽤による。汗孔は肺から送られる衛気の働きで開閉を⾏なっている。体内で不要になった津液は、肺の宣散の働きにより体表まで運ばれ汗となって排泄される。汗は体内の濁気や侵⼊してくる外邪を追い出す働きもある。肺の宣散の働きが乱れると、汗孔が閉じて汗が出なくなったり、汗孔が閉じず汗が出すぎる。
※⼀般に体表の気が不⾜すると汗孔は開いて汗が出やすくなる。
②粛降の働き(粛降とは⽔穀の精微や津液を内⽅や下⽅に散布する働き。粛降のイメージはシャワーを下にむけて噴射した感じ)
脾の昇清の働きで肺に送られた⽔穀の精微や津液は、肺の粛降の働きで臓腑や⾝体の下部の経絡や組織に運ばれる。全⾝は肺の 宣散と粛降の働きによって栄養される。また津液を腎、膀胱まで下降させる働きも肺の粛降による。粛降の働きが乱れると津液の代謝が悪くなり、上半⾝がむくむ、尿量が減る、痰が気管にたまるなどの症状が現れる。
(3) ⽔道を通調する
⽔道とは津液の通る道をいう。肺の宣散と粛降の働きを津液の⽴場からみると、宣散により津液は体表に運ばれて汗となり、粛降により膀胱に運ばれて尿となる。
(4) 百脈を朝め、治節をつかさどる
「朝」には、集合という意味がある。全⾝の経脈は肺に集まる。そのため、肺は「百脈を朝める」といわれている。また全⾝の⾎と脈は、⼼が統括しているが、⾎の運⾏は気の推動機能に依存しており、⾎は気の昇降運動により全⾝に運⾏している。そして肺には「⼀⾝の気を主る」機能があり、また呼吸を司っている。全⾝の気機は、この肺の機能によって調節される。したがって⼈体における⾎液の運⾏もまた、この肺気の輸送と調節に依存していると考えられるのである。
※「治節」には、管理・調節の意味があり、この肺の治節作⽤には、次の4 つの内容がある。
①呼吸を調節……肺は呼吸を司っており、これにより規則正しい呼気と吸気が⾏われる。
②気の昇降出⼊を調節……肺の呼吸により、全⾝の気機は管理・調節されている。
③⾎液運⾏の推動・調節……肺は気の昇降出⼊運動を調節しているが、これにより⼼臓を助けて⾎液の運⾏を推動・調節している。
④肺の宣発・粛降機能は、津液の輸布、運⾏と排泄を管理・調節している。
「治節を主る」とは、上記①〜④のような肺の主要な⽣理機能を端的に表現した⾔葉である。
◆⼤腸の主な⽣理機能
(1) 糟粕の伝導をつかさどる
⼤腸の働きは⼩腸から送られてきた⾷物残渣の中から、さらに有⽤な⽔分を吸収し残ったものを⼤便(糟粕)として排泄する。⼤腸の働きが失調すると便秘、下痢などの症状が現れる。
※肺・⼤腸が弱った時の症状
呼吸不全、⿐⽔、⿐づまり、咳、発汗異常(多汗・無汗)、⽪膚や肌の不調
便秘・⼤腸がん

◆腎の主な⽣理機能
(1) 蔵精を発育・⽣殖・成⻑をつかさどる
精には⽣まれた時に⽗⺟から受け継いだ「先天の精」と、⽣後、飲⾷物から得られる「後天の精」がある。精は腎に貯えられているので「腎精」とよばれる。⼈の⾝体は腎精の充実とともに成⻑・発育し始め、腎精が衰えると⽼化が始まる。幼年 期は背が伸び、⻭が⽣え変わり、⽑髪が伸びる。思春期になると「天癸」とよばれる物質が⽣じ、男⼦では精⼦がつくられ、⼥⼦では初潮を迎え排卵が始まる。男⼥ともこの時期に⽣殖能⼒が備わる。腎精が不⾜すると、⼦供では成⻑・発育が遅れ、⻭の⽣え変わりが遅い、運動が苦⼿、⾝⻑が伸びないなどの症状が現れる。⼤⼈では性欲の減退、不妊、インポテンツ(陽萎)・ 髪が⽩くなる、聴⼒の低下、⾜腰の衰えなどの⽼化現象が現れる。
(2) ⽔をつかさどる
腎は全⾝の津液代謝を⽀配している。津液代謝はおもに肺・脾・腎の 3臓が共同で⾏なっているが、その中⼼になるのが腎である。腎の陽気は、脾が⾏なう津液の運化と肺が⾏なう⽔道を通調する働きを助けている。腎には肺の粛降作⽤により、膀胱まで下降した不要な津液(濁という)を尿として排泄させる働きと、再⽣できる津液を再び肺に戻す働きがある。このように肺や脾と協調して、全⾝の津液代謝を⾏なう働きを腎は「⽔を主る」という。この働きが失調すると、不要な津液を尿に変化させられず、尿量減少、むくみなどの症状が現れる。
(3) 納気をつかさどる
呼吸は肺が中⼼となって⾏われているが、腎も呼吸に深く関わっている。腎は肺の粛降作⽤で吸い⼊れた清気を深く納めている。深呼吸で息を深く吸い込めるのは、腎の働きである。「肺が呼気を主り、腎が納気を主る」とは、肺と腎が共同で呼吸を⾏なっていることを述べた⾔葉である。腎の納気作⽤が失調すると、吸気がしづらい、呼吸困難(息を吸い込めない)などの症状が現れる。
※腎が弱った時の症状
⽿のトラブル、腰痛、ひざの痛み、婦⼈病、甲状腺機能異常、抜け⽑
⾻や肌のトラブル、内分泌系のトラブル
◆膀胱の主な⽣理機能
(1) 貯尿・排尿作⽤
⼈体の⽔液代謝の過程において、⽔液は肺・脾・腎・三焦の作⽤によって 全⾝に散布され、各組織・器官に利⽤され、その後膀胱に達し尿に変えら れる。そして膀胱の気化作⽤によって体外に排泄されるのである。膀胱の 気化作⽤は腎の気化作⽤により調整される。膀胱の 気化作⽤が失調すると、⼩便不利〔排尿困難〕や癃閉〔排尿障害、尿閉〕などの症状が現れ、 膀胱の制約機能が失われると頻尿や失禁などの症状が現れる。

